mari*mariクローズアップ「一生のつきあい」

アトリエ「梛木」は、高橋さんひとりの事務所。 自宅続きのオフィスに彼女の机がある8年前の独立に”凪ぎ”をイメージしたネーミングを考えた。木が好きで、神木にも使われる「梛」という木の名を当てた。

秋田ではインテリアコーデイネーターという職種の認知度が低く、室内を飾るだけの仕事と思われがち。だが実際は、設計の前段階からもかかわるトータル的なプランニングだ。高橋さんは、クライアントのイメージやライフプランニングを徹底的に理解するために20回以上の打ち合わせを重ねたりもする。目の前で高橋さんの手が見取り図やパースに描き起こしていく。


「絵を描くのが好き」というのが、この世界に入ったきっかけでもある。山形で事務什器販売の仕事をしていた時、さらさらとパースを描きだした高橋さんをハウスメーカーの社長が見初めた。22歳。秋田市の新店舗立ち上げに同行し、そのまま住むことになった。独学で、28歳に士を取得。そして独立の年にインテリアコーディネーターを取得した。また、福祉住環境コーディネーターとして、福祉施設や介護保険住宅改修にも力を入れている。

「生活を営むためのコーディネートをしたい」と、自分の経験や母としての目線を大切にする。リフォームや修繕、模様替えなどのたびにメーカーや職人を選ぶのではなく「家も人も一生を通してつきあっていきたい」という。「何をするにも、人と人が基本」。出会いが一生のものだと確信している。そのため、講習会を開いたり、知ってもらうための活動も欠かせない。2か月に1度
開催されるくらしの講習会「すっびんライフ」(協力/(株)イング)には、主にロコミで年代間わずに集まる。生活のちょっとした工夫や知恵が好評だ。

年間に50件以上の仕事をこなす。それは、半日で終わるものもあれば、何度も何度も足を運ぶ長いスパンのものもある。インテリアコーディネーターはなくても家は建つだろう。だが「サンマに添えられた大根おろしなんです」と高橋さんは笑う。なくてもサンマは食べられる。けれど、生活のスパイスとなって「あれば何倍もサンマがおいしく感じる」。建築士にインテリアコーディネートが加わ物て、生活は彩りを手に入れる。
「器や焼き物が好き」で、いつかは自作の器を手がけた客様にプレゼントしたいと密かな夢がある。「会えて良かった」の一言のためにこれからも人に会い続ける。